インターネット回線は、PPPoEではなくIPoE接続があたり前になった。
ただIPoE接続はIPv6での接続となるため、IPv4にしか対応していないサイトにはアクセスできなくなる。そこでIPoE接続した後にIPv4をIPv6でカプセル化する「IPv4 over IPv6」という技術が使われている。
ところがプロバイダのサービス名が多く、方式との対応関係が分かりにくい。用途から回線を選べるように整理した。
結論:用途から選ぶ
| 用途 | 選ぶべき方式 | 代表的なサービス |
|---|---|---|
| VPN、Webサーバ公開、固定IPが必要 | IPIP(固定IP契約) または MAP-E固定IP | transix固定IP、クロスパス固定IP、v6プラス固定IP |
| ポート開放したい(80/443以外でよい) | MAP-E | v6プラス、IPv6オプション、OCNバーチャルコネクト |
| 閲覧中心。ポート開放は不要 | DS-Lite | transix、クロスパス、v6コネクト |
MAP-Eのポート開放には制限がある。割り当てられた240個のポートしか使えず、Webサーバで使う80番や443番は使用できない。この点は後述する。
方式の一覧
DS-Lite
プロバイダ側でNATを行う方式。
ユーザ宅のルータはIPIPトンネルの終端だけを担当し、IPv4パケットをIPv6で包んでプロバイダ側のAFTR(Address Family Transition Router)という装置へ送る。NAPTはAFTRでまとめて行われる。
- グローバルIPv4アドレスはユーザのルータに割り当てられない
- NATが事業者側なので、ポート開放は行えない
- ルータ側の設定はトンネル終端だけで済むため、設定は比較的簡単
外部から自宅のルータに接続する手段がないため、NASやWebカメラの公開、VPNサーバの設置はできない。
MAP-E
ユーザ側のルータでNATを行う方式。
グローバルIPv4アドレスがユーザ側のルータに割り当てられる。ただし1つのIPv4アドレスを複数の契約者で共有しているため、使えるポート番号が分け合いになる。
- ユーザ側でNATを行うため、ポート開放が行える
- ただし割り当てられたポートしか使えない
- 使用可能なポート数は240個
- 0〜1023番のWell-knownポートは割り当てられない
つまりポート開放はできるが、80番や443番といった主要ポートは使えない。「どのポートでもよい」用途であれば実用になる。
IPIP(固定IP契約)
transix、クロスパス、v6コネクトの固定IP契約で使われる方式。
IPv4アドレスを他のユーザと共有しないため、ポートの分け合いが発生しない。65,535ポートすべてが使える。PPPoE+固定IPサービスと同じように扱える。
- 固定のグローバルIPv4アドレスが使える
- ポート開放の制限がない(80番、443番も使える)
- 月額料金が別途かかる
- 対応ルータが必要
4rd/SAM
ソフトバンク光が採用している方式。利用には光BBユニットのレンタルが必要で、市販ルータでは対応できない。
サービス名と方式の対応
ここが最も混乱しやすい部分。同じサービス名でも、契約プランによって方式が変わる。
| サービス | 提供事業者 | 可変IP契約 | 固定IP契約 |
|---|---|---|---|
| transix | インターネットマルチフィード | DS-Lite | IPIP |
| クロスパス(Xpass) | アルテリア・ネットワークス | DS-Lite | IPIP(固定IP1/8/16) |
| v6コネクト | — | DS-Lite | IPIP |
| v6プラス | JPIX(旧JPNE) | MAP-E | MAP-E(v6プラス固定IPサービス) |
| IPv6オプション | BBIX | MAP-E | — |
| OCNバーチャルコネクト | NTTコミュニケーションズ | MAP-E | 固定IP1あり |
transixとクロスパスは「DS-Liteとは別の方式」ではない。可変IP契約ではDS-Lite方式そのもので、IPIPになるのは固定IP契約を選んだときだけ。この点は混同されやすい。
なお、v6プラスを提供していた日本ネットワークイネイブラー(JPNE)は、現在は株式会社JPIXに商号が変わっている。古い記事ではJPNE表記のままのものが多い。
MAP-EとDS-Liteの比較
| 項目 | MAP-E | DS-Lite |
|---|---|---|
| NATを行う場所 | ユーザ側ルータ | 事業者側(AFTR) |
| IPv4グローバルアドレス | ユーザ側ルータに割当(共有) | ユーザ側には割り当てられない |
| ポート開放 | 240個の割当ポートのみ | 不可 |
| 80番・443番 | 使用不可 | 使用不可 |
| ルータ設定の難易度 | ポート計算が必要でやや複雑 | トンネル終端のみで比較的簡単 |
| 事業者設備の影響 | 受けにくい | 受けやすい |
海外製ルータ(Cisco、FortiGateなど)では、ポート計算ロジックが必要なMAP-Eの設定難度が高く、トンネル終端だけで済むDS-Liteのほうが対応しやすい傾向があった。ただし近年は各社が日本独自仕様への対応を進めており、状況は変わってきている。
3方式の違いをもっと詳しく知りたい場合、用途別にどれを選ぶべきかを含めて別記事にまとめた。
→ MAP-EとDS-Liteの違い|どっちがいい?IPIPも含めて比較
自分の回線がどの方式か確認する
契約しているプロバイダのサービス名を調べ、上の対応表と照らし合わせるのが確実。サービス名が分からない場合は、test-ipv6.com でIPv4側のISP名を確認する方法もある。VNE事業者名(Internet Multifeed、JPIX など)が表示されれば、IPv4 over IPv6 が動作している。
詳しい手順は別記事にまとめた。
よくある誤解
「IPv6にすれば速くなる」は半分正しい。
速くなるのはPPPoEの網終端装置という混雑地点を通らなくなるため。IPv6そのものが高速なわけではない。
「MAP-Eならポート開放できる」も半分正しい。
できるのは割り当てられた240個のポートだけ。Webサーバを立てたいなら固定IP契約が必要になる。
「固定IPはPPPoEでないと使えない」は古い情報。
IPoEでも固定IPv4を提供するサービスが複数ある。PPPoEの速度低下を避けつつ固定IPが使える。